1884年、ギリシャ系イタリア人のソティリオ・ブルガリがローマで創業。ヘビを象った“セルペンティ”をはじめ、“ビー・ゼロワン”や“ブルガリ・ブルガリ”“ディーヴァ”など華麗でダイナミックなデザインが魅力。ジュエリーのほか、時計、バッグ、香水なども人気。
2011年に帰らぬ人となった、ハリウッドの至宝、エリザベス・テイラー。世紀の大女優の人生は、男性からの愛とジュエリーの輝きで満ちあふれていた。中でも5番目の夫、リチャード・バートンとの蜜月関係と、彼から贈られたブルガリのジュエリーは特別。リズの美と名声と愛の象徴であった。
エリザベス・テイラーとリチャード・バートンの愛情関係は、『クレオパトラ』の撮影でローマに滞在した1962年に始まった。お互い伴侶がいたにもかかわらず、最初のシーン撮影後、すぐ恋に落ちたという。それは同時に、リズとブルガリの情熱的な関係の始まりでもあった。撮影の合間にコンドッティ通りのブルガリ本店を訪れたバートンが、リズに初めて贈った愛の印ーーそれは、7.4カラットのエメラルドをペアシェイプのダイヤモンドが取り巻く華麗なリング。やがてスターの情事の噂は世界中に広まるが、ブルガリ本店は2人のお気に入りの隠れ家となり、ジュエリーの輝きが密やかに愛の行方を見守ったという。
ローマの撮影所で生まれ、ブルガリ本店で育まれたリズとバートンの愛は、遂に結婚に至る。1963年、婚約記念としてリズに贈られたのは、58年にブルガリが制作したブローチ。ブリリアントカットとペアシェイプのダイヤモンドがエメラルドを囲むデザインで、リズはこれを64年の結婚式で身に着けた。イエローのドレスの襟にグリーンの宝石が優雅に煌めき、小花の髪飾りも初々しい花嫁、リズ。その姿は多くの人々の記憶に刻まれたはず。さらにこの時、バートンが結婚記念としてリズに贈ったのが、そのブローチをペンダントトップとして装着できる、16個のエメラルドをあしらった見事なネックレスである。
出会いを彩ったリング、婚約記念のブローチ兼ペンダントトップ、結婚を祝したネックレス。他にもリズはたくさんのギフトを贈られているはずだが、ブルガリのダイヤモンド×エメラルドのジュエリーは特別である。アカデミー賞を受賞した時も、記者会見の時も、2人でディナーに出向く夜も。時にはブローチだけ、ネックレスだけ、時にはすべて。長きにわたり愛を込めて身に着けた。リズにとってジュエリーとは純粋な幸福の源だったのだ。そんなリズが2002年、「エリザベス・テイラー・エイズ基金」のチャリティオークションのために手放したのが、リング。愛と幸福の印をシェアしようと決めたのである。
2011年3月に79歳で他界したエリザベス・テイラー。2度もオスカーを手にし、8回の結婚を繰り返した大女優の人生は、まさにジュエリーのように華麗だった。同年6月、クリスティーズが彼女のプライベートコレクションの競売を開催。ブルガリは、バートンがリズに贈ったジュエリーを含む7点を買い戻した。60年余の時を経てローマの隠れ家に戻ってきた愛の印は、その後、各国で開催された「エリザベス・テイラー コレクション」で披露された。また、2014年にはリズの崇高な美しさと輝きにインスパイアされた“ディーヴァ”コレクションもデビュー。亡くなってもなお、リズとブルガリとの絆は、深まるばかりである。